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メタバースの不動産投資がブームに 日本でもバーチャル渋谷・大阪がオープン

田中 あさみ田中 あさみ

2022/03/30

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イメージ/©︎bbtreesubmission・123RF

2021年後半からアメリカでメタバースでの不動産投資が盛んになり、10月にはSNSで知られるFacebook社が社名を「Meta(メタ)」に変更したことも記憶に新しいでしょう。メタバースとは、コンピューター内に存在する仮想空間を指します。この社名変更も、仮想空間サービスを意識したものと考えられます。

メタバースを用いたゲームでは、「The Sandbox」「Decentraland」と言うプラットフォーム内に自身のアバター(分身)を作り、非日常体験やゲームを楽しむエンターテイメントです。

そして、11月には不動産投資ファンド「リパブリック・レルム」が、The Sandbox内の土地を430万ドル(約4億8800万円)で購入したと発表しました。

今回は、メタバースやブロックチェーン、NFTとは、メタバースの不動産投資の実態やメリット・デメリット・最新情報、日本のメタバース事情についてお伝えしていきます。

メタバースとは? ブロックチェーン、NFTって何?

メタバースとは、「Meta(超越した)」と「Universe(宇宙・全世界)」を組み合わせた言葉で、主に現実から切り離された仮想空間を指します。

メタバースと言えば、VRゴーグル・ヘッドセットなどを付け、3Dの世界でゲームやイベントなどを楽しむことを想像される方は多いのではないでしょうか。 

「自身のアバター(分身)がある仮想世界」という意味合いで、20年に発売され大ヒットとなったゲーム「あつまれ どうぶつの森」や、オンラインゲーム「フォートナイト」などもメタバースに該当します。

メタバースとブロックチェーン

ブロックチェーンとは、「暗号技術によって正確な取引履歴を維持するデータベースの1種」とされています。

従来の情報管理システムは、一つ一つの取引履歴を第三者機関がまとめて管理するという「中央集権型」でしたが、ブロックチェーンは全ての取引履歴(ブロック)を一つの鎖(チェーン)のようにつなげて、皆で共有し分散管理を行います。

出典/経済産業省「ブロックチェーン技術を活用したシステムの評価軸Ver.1.0」

ブロックが複数連結されたものをブロックチェーンと呼び、一つの取り引きについてデータ改ざんを行うと、新しい取り引きについても全て改ざんしなければならない仕組みとなっていますので、データの破壊・改ざんが難しい技術です。

ブロックチェーン化された取引履歴は、複数のシステムが情報を共有し同期できるように管理されていますので、一部のシステムが停止・故障しても、システム全体の運行・稼働に与える影響は少ないとされています。

ブロックチェーン技術を利用した資産を、NFT(Non-Fungible Token・非代替性トークン)と呼びます。NFTとは唯一無二のデジタル資産を指し、アートやゲーム内のアイテム、不動産などがあります。

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メタバースの不動産を約5億円で購入した理由とは?

前述しました、The Sandboxで購入された土地。メタバース内の不動産では史上最高額だそうですが、なぜそんな高額な取り引きが実現したのでしょうか。

それは、メタバース上の家や小売りスペースを利用するために、仮想通貨で購入する個人・法人が増え、不動産の価値が上がると期待されているのです。

リパブリック・レルムの創設者ヨリオ氏は、さまざまな仮想世界の土地を購入することで、リスクの軽減を図っており、土地は作り手から直接購入する又は公開販売や市場外取引を通じて購入していると語っています。

購入した土地は、保有しながら値上がりを待ち、価格が上がったときに売却するか、建築家に依頼し家やショッピングモールを設計し、ゲーム開発者に建ててもらい収益を得るなどの活用を行う予定です。

現実の不動産と同様に、利便性が高いエリアにある土地や家は高く取り引きされ、小売りスペースで商品を売ることもできます。

現物の不動産のように、経年劣化に伴う家賃収入減少のリスクや、災害リスク、修繕費がかさむことはありませんが、仮想空間の土地ならではのリスクが存在します。

メタバースの不動産、リスクは?

メタバース上の不動産の最大のリスクは、利用者が減り需要が低くなった結果資産価値が下落してしまうことです。もしメタバースが一過性のブームであれば、今後The Sandbox やDecentralandの土地の価格は下落してしまいます。

加えて仮想通貨で取り引きしているため、仮想通貨の価格の変動により不動産の価値も上下するというリスクがあります。

メタバースでよく利用されている「イーサリアム」という仮想通貨は、22年1月18日時点で約37万円(日本円)でしたが、1月24日には約27万円まで下がり、1イーサリアムあたり10万円下落しました。

例えば、1イーサリアム40万円の際に50イーサリアムの土地を購入すると、2000万円での購入になりますが、イーサリアムの価格が10万円下落した場合、500万円(50イーサリアム×10)の資産価値が落ちてしまうのです。

現実世界の不動産投資にもリスクはありますが、現物資産であること、「生活になくてはならないもの」であるという圧倒的とも言える強みがあり、メタバースの不動産は現物ではない、生活に必須ではないという大きな違いがあります。

メタバースと現実世界のコラボレーション? 日本のメタバース

20年5月にはKDDI株式会社・一般社団法人渋谷未来デザイン・一般財団法人渋谷区観光協会を中心とする「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」が、渋谷区公認のプラットフォーム「バーチャル渋谷」が始動しました。

バーチャル渋谷は、現実の渋谷と同じスクランブル交差点エリアとMODI前エリアがあり、サッカーの日本代表戦をバーチャル渋谷内の特別ステージで観戦し、サッカー日本代表のアバターがもらえる企画などが開催されました。

25年に万博が開催される大阪では、都市としての魅力を国内外に発信し、万博への期待感を高め大阪の新たな文化の創出・コミュニティの形成を目的として21年12月に「バーチャル大阪」を一般公開しました。

大阪府・大阪市が手がける都市連動型のメタバースで、2月に本格オープン、3月にはVTuberの音楽・トークライブイベントやアーティストによるライブイベントが開催される予定です。

史上初のメタバース住宅ローンも

カナダのテクノロジー企業 TerraZeroTechnologiesは、22年2月にDecentraland内の土地に住宅ローンを提供することを公表しました。

メタバース上の土地購入希望者は、TerraZeroのサイトを利用して物件を検索し、仲介を依頼することで不動産を担保として融資を申し込めます。

加熱するメタバースの不動産投資ですが、「NFTの不動産は暗号資産に近いのでは」という見方もあり、現状ではNFT投資に近い存在です。

メタバースの不動産投資ブームが一過性のものとなるのか、多くのユーザーに普及し価値が上がっていくのか今後の動向が注目されます。

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この記事を書いた人

2級FP技能士・ライター

北海道在住。大学在学中に2級FP技能士を取得。 会社員を経てFP資格を活かし、ライターとして不動産・金融・相続・法律分野の記事を多数執筆する。「難しいことを分かりやすく」をモットーにライターとして活動中。

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